帰化といっても外国人が日本人になるほうの話ではなくて、
生物のお話なんで念のため。
帰化生物。
別の場所から何らかの理由で持ってこられた生物が、もって
こられたさきで繁殖して定着してしまうことを言う。
代表的な例としてはブラックバスとかセイタカアワダチソウ
あたりを挙げておくといいかもしれない。
セイタカアワダチソウはもともと北米の植物だったが、船などで
その種子が運ばれ、やがて日本の鉄道事情が良くなると
その鉄道などに沿って繁殖を開始した。
(最初は観賞用として持ち込まれたが、本格的に増殖しだしたのは戦後であるとのこと)
その繁殖力は極めて旺盛で、かつ根からシスデヒドロマトリカリアエステル(cis-DME)という毒
を出すという性質もあいまって、ススキなどが生えていたところをがんがん侵食
し始めたのだ。
その結果、ススキは壊滅的状況に陥り絶滅の危機さえあるという
事態になってしまった。
お月見のときのススキがなくなっちゃうよママん。
ブラックバスももともとは北米の魚であったが、1925年米国オレゴン州
から神奈川県の芦ノ湖へ食用目的で輸入放流されたのが最初である。
実際には生臭くっていかんのだけど。
調理法によっては、種の比較的近いスズキに近い味をだせるそう
だけど、いかんせんうまくいっていない。
ブラックバスはその繁殖力と食欲によって日本の湖沼の生態系を
大きく崩してしまった。
もともといなかった生物が別の環境に侵入して繁殖するのには
いくつか理由がある。
そもそも適応できなければ帰化生物にはなれないので、ある程度
似た環境のところでのみ繁殖できるわけだけどね。
まず生物自体の基本的能力が高い場合。
例えばオーストラリアのようによその大陸から隔離され、有袋類のみ
生息していたところに、哺乳類(人間含む)が侵入してきた結果、
哺乳類が有袋類をおいやってしまいつつある。
特に似たような生活パターンの野犬とフクロオオカミでは、野犬の
ほうが優位だったため、フクロオオカミは絶滅してしまった。
次にその生物が住みやすい環境があった場合。
げっ歯類の仲間ヌートリアなどは、日本のような湿地の多い場所に
適応しているためわらわら増えているらしい。
田んぼとか多いしちょうどいいらしい。
まあそういう帰化生物が圧倒してしまって、もともといた生物を
絶滅させてしまうこともしばしばある。
しかしその一方で絶滅せずに、似たような種と交配して混血に
なったり、あるいはそこそこに生存権を確保したりする場合も
結構あるのだ。
そしてその逆のパターン。
最初に挙げたススキの例だが、実は今ススキがセイタカアワダチソウに
逆襲をはじめているのだ。
成長速度を上げ、セイタカアワダチソウの毒に耐性を持ち、巨大化した
かつてのススキと一味違う超ススキが出現しつつある。
そして彼らはセイタカアワダチソウに侵略された領域をとりもどしつつある。
でも巨大化したススキじゃ風流じゃないよママん。
(逆にセイタカアワダチソウは増えすぎると自らの毒で自家中毒を起こしてしまうらしい。
また、自ら作った毒が土壌にたまってそれの影響で自ら成長できなくなったところに他の植物が
侵入、というなんだか本末転倒な話もある。)
そんなわけで生物も生態系も存外やわじゃない。
大体地球規模の絶滅なんて数回も繰り返されているわけで。
そりゃ種によっちゃ絶滅するものもあるだろうけど、そこには他の生物が
侵入して似たような形になるだけだ。
だとしたら環境保護なんていらない、かというと、そんなこともない。
生態系が破壊されまくったらどうなるかっていうと、最終的には
生物は生き残るけど人類という種は絶滅する、なんてことになるんじゃ
ないだろうかと。そんなもんで。
人間という種が生き残るために環境保護って必要なのよ。
もう時すでに遅いかもしれないけど。